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2017年10月12日 | Posted in 職人工房芸術科 | Tags:
Metal Artマスターコース 11月28日

フィレンツェの中心からちょっと離れたBagno a Ripoliという、緑に囲まれたフィレンツェを一望できる小さな町の住居兼工房にお邪魔しました。
建物はトスカーナのオリーブ農家を改築したものなので、床はテラコッタ、天井は古い木の梁が見え、薪ストーブが炊かれて、いわゆる絵に描いたようなトスカーナの素朴な田舎の家といったとても暖かい雰囲気です。

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先生のGuastiさんは、今日も教える傍ら新しい作品の制作に励んでおられました。今月90歳のお誕生日を迎えられたばかりとは思えないほど、お元気です!

このマスターコースを先行した学生さんは、今、中が空洞の古木を新しい生命が宿る場所(それによって古木も蘇る)と見立てた、自然を象徴するオブジェを制作中です。古木はGuasti先生が日頃収集された素材から選んだものです。

今日は、親子の檜を作業します。
檜はワックスで作り、鋳造所に持って行く予定です。親の方の檜は重くなり過ぎてしまうので、中をくり抜いた方が良いということで、一旦半分に切ります。

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ワックスの檜を真ん中から切るGuasti先生。ここは外にある作業小屋です。
半分に割った檜のそれぞれの中をくり抜きます。バーナーで少し熱しては木べらで削ります。これを厚さが7、8mになるまで繰り返します。

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中の削り方を見せる先生。淵が7、8mになるようにくり抜きます。

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難しい部分は学生さんに手を貸す先生。

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難しい部分以外は、学生さんの作業を見守ります。

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外側には檜の葉に見立てる線を入れて行きます。使っているのは適当な鉄の棒です。

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こういう感じで、親子の檜になります。

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来週の予定を話す先生。この親子の檜を鋳造所へ持って行鋳型を作ってもらいます。

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この古木に色々な動物や植物が棲みつきます。

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古木のスケッチ。

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棲みつく動物や植物のスケッチ。

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鋳型に銅を流し込んでで作った動物達。不要な部分を切り取り仕上げます。

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細部にまで拘って製作中。土台においた時に影の効果も活かせそうですね。

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花やきのこも作っていきます。

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マスターコースの学生さんは、絵画・彫刻・芸術に関する歴史など一通り勉強し、経験も知識もありますので、やりたい事を自由に選択して先生に教わります。Guasti先生は、版画・絵画・彫刻(木、大理石、金属、その他の素材)と広範囲に渡る経験があり、またユーモアに溢れているので、この先生に教えて貰うことができてとてもラッキーです!と学生さんは笑顔で答えてくれました。
それに加え、Guasti先生の奥様も彫刻家で、芸術に関する知識を豊富に持っています。折りをみてはいろいろなお話をしてくれたり、どこにどんな作品があるから観に行くように教えてくれます。しかも、学生さんに話すときはとてもゆっくり話すように心がけ、繰り返し根気よく説明してくださってました。
この学生さんとGuasti先生、奥様を見ていると、まるで孫に自分たちが持っている知識や教養を教えてくれているような光景で、学生さんが喜んで通っていることになるほどと思いました。



≪ Marcello Guasti先生の紹介 ≫
Marcello Guasti先生は、フィレンツェ芸術研究所のグラフィックアート課を卒業し、Pietro Parigi(1889 – 1990)に師事。古典的なイタリアルネッサンスの伝統を現代的に再現するスタイルです。初期には主に白黒の版画を制作していましたが、後に彫刻も制作するようになり、それ以降は彫刻が主になっています。イタリア国内はもとより、海外特にドイツでは展覧会、グループ展や個展を数多く行いました。ベネチアの国際美術展覧会にも3度出展。2011年には視覚芸術で世界で活躍するフィレンツェ出身者を受賞しました。

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版画、紙は和紙しか使わないそうです。

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こちらは「Renaioli」というアルノ川の川底から砂や砂利を汲み上げる戦前の労働者を題材にした作品の数々。日本の版画に影響を受けています。

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版画、オブジェの下書きなど所狭しと並んでいます。

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浮かんだアイデアを次々にスケッチして、その中からピンと来るものを実際の作品にしていきます。

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左はシラクサのアルフェオとアレトゥーサの伝説(Alfeo ed Aretusa)を題材にしたオブジェ、ポルトガル産の薄いサーモン色をした大理石を使用。右は苔(Lichene)の付いた石を檜に見立てたオブジェ。

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左はブロンズの檜、右はテラコッタの檜。近年の作品を見ると、檜のモチーフが主流になっています。

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黒い泉。南アフリカ産の大理石使用。